アメリカのNPO
カテゴリー: 経営日記
最近イベントが多過ぎて書くことも多過ぎて,なかなかまとまってブログを更新する時間がない.で,もう先月の話になってしまった渋澤渡米団の中から,特に印象に残った訪問について書いてみよう.
ワシントンDCで訪問したのは,環境関連NPOであるEnvironmental Defense Fund(EDF)である.その名の通り,「環境を守る財団」なのだが,通常のNPO,NGOと呼ばれる団体とは大分と運営方針が変わっている.
この財団は科学者や技術者,その他プロフェッショナルの集まりで,年間予算はなんと100億円.スタッフを数百人抱え,最先端の環境関連の情報や知見を有している.
特徴的なのは,地球環境,特に温暖化の問題を解決するために,民間企業と協力的な関係を築いている点だ.多くの環境NGOが,民間企業を敵に回して,時には反文明主義とも取れるような「貧しかった昔に戻ろう」的な過激な主張をすることもある.グリーンピースなんかは典型的だが,自然保護や環境保護のためには違法行為や逮捕者が出ることも辞さない過激な団体もある.
その点このEDFは,企業活動に対して省エネルギーを実現するための手法を,その企業と一緒になって考えるアプローチを取っている.例えば世界最大の小売業者であるウォルマートは,EDFの助言に従って輸送の際にかかるガソリンを節約することが出来た.そのことは勿論CO2削減につながるし,ウォルマートにとっても経費が削減できることになる.他にも大手化学会社であるデュポンをパートナーにしたり,マクドナルド,フェデックスなどもパートナーにしている.そうそう,世界最大級の投資会社であるKKRまでもパートナーとしているのだ.
EDFが面白いのは,こうした企業に対する助言,コンサルティング業務に対してフィーを取っていないことだ.つまり無償で,一流の科学者たちが経費削減アドバイスをしているのと同じことになる.
なんでも市場のダイナミズムを生かして解決しようとするのがアメリカらしい.やみくもに政治的に主張するのではなく,民間企業との折り合いを「無償コンサルティングによる経費削減提案」という形で,結果的には環境保護に結び付けようとするところが面白い.
他にも潤沢な資金を使っての法案提案,新しい環境技術開発に対する援助なんかも行っている.資金は個人から,他の財団,そして企業寄付からなっている.それで年間100億円も集まるのだからアメリカは凄いと思う.
このNPOがやっているのも,「大きな社会的テーマを設定し,その解決に向けて創造的なアプローチを取る」例である.今回アメリカで学んだことを,NPOの分野で実現しているこの団体に訪問で来て良かった.また機会があれば,再訪したいと思います.