渋澤渡米団100周年記念事業
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中小企業の取れる経営戦略は実は限られていて,僕は究極的には「高付加価値戦略」しかないと思う.
定義からして中小企業は規模が小さい.だから販売力が直結する購買力もないし,要するに価格で大手企業には勝てない.そして同規模企業との競争も,低価格をポイントにしてしまうと,「どちらが貧乏により辛抱できるか」 みたいなしんどい状況に陥ってしまう.
だからこそ高付加価値戦略(高粗利戦略と言い換えても良い)を追求するべきなのだが,そのメリットはまさしく中小企業が求めているものだ.
(1)粗利率が高いということは,同じ社員数,同じ経費額だとすると企業の収益性が高いということだ.その結果,財務状況が安定する,つまりつぶれにくくなる.
(2)収益性が高いということは,損益分岐点が低いということで,売上が減っても赤字が出にくい.つまりつぶれにくくなる.
(3)収益性が高ければ給与水準も高めに設定でき,中小企業の弱点である人材力を補い易くなる.
(4)収益性が高ければ,将来に向けた投資がし易くなる.
まあ「儲かっていることのメリット」が沢山あるのは当たり前だが,その当たり前のメリットを真剣に追求しようとしている会社は少ないようにも思える.
同業者で国際比較しても,なぜか日本企業の利益率は低い.欧米には売上1000億円以上で,かつ税引き前利益率20%とか30%の会社がごろごろしているが,日本だと大企業でそれだけの利益率を確保している会社はごくわずかだ.また中小規模でも,税引き前利益が10%というのは当然で,考えてみれば国債の利率が5%とかあるのに,わざわざ経営までして,会社の総資産利益率がそれ以下というのはずいぶん効率が悪いものだ.
では粗利率を上げるにはどうしたら良いかだが,これも限られた方法しかない.第一に強い競合が増えにくいニッチな事業分野・製品を狙うべきである.儲かっている知られた市場には強者が集まる.大手企業が入ってきたらそれこそ競争にならない.
第二に,付加価値が高いだけの理由がなければならない.それは勿論商品力,他には見つからない品質や機能の良い商品を提供すること(でもそこそこの市場規模があると,必ず「良いものを安く」提供する会社が現れる), 地理的に近い市場を相手にしていて,デリバリーに優れているとか(これも輸送業の発展との競争である)など,「高い利益率を正当化するだけの理由」がなければならない.
でも一番大切だと思うのは,やはり「必ず高付加価値経営をするんだ」という経営者の意思ではないかと思う.あの武田薬品だって,経常利益率30%,額にして3000億円も儲けていた時に「収益率が悪すぎる」といって,低粗利分野を売却したりリストラすら行った.またあるコンサルティング会社は,経常利益率が20%を切りそうになって,責任を取って役員報酬を減額したとも言われる.
「経営は意思である」と言われるけれど,やはりそうなんだよなあと思う.経営者がしっかりした意思を持って,粗利率何%は最低確保とか,経常利益率は最低10%と決めることで,それならそのためにはこうしないと,という方策が考えだされるものだ.
当社もまだまだだが,少しずつ利益率も上がってきた.今年はもう少し,そして来年からも高付加価値経営の実現に向けて頑張っていこうと思います.