社長ブログ

社長フィロソフィー日記

事業の目的・意義を明確にする

カテゴリー: 経営日記

今さらだけど,京セラ経営十二箇条の重要性を感じている.

第一条に,「事業の目的・意義を明確にする」というのがある.経営学的に言えば「事業領域を定義する」ということだが,実はもっと深い意味があることに気がついた.

そう,すべての課題・問題は,この「事業目的の設定の仕方」に帰することが出来ると思う.稲盛さんは以前,他の経営者からこう言われたらしい.

「稲盛さんみたいになんでも四角四面に考えて,いつも寝る間も惜しんで一心不乱に努力して,何が人生楽しいんですか.私みたいにいい加減な社長でも,社員が居心地良く働いてくれて会社は回っている.もっとリラックスして仕事されたらどうですか.」

稲盛さんは答えたそうだ.「あなたと私では登ろうと思っている山が違うんです.どちらが良いかは分かりませんが,私が登ろうとする山は大変高くて,垂直登攀しないと登っていけないんです.」

結構強烈な答えだが,真理を突いていると思う.結局,そこそこの会社でそこそこやっていこうとすればもしかしたら課題も問題も少なく,能力と多少の真面目さがあればやっていけるのかもしれない.多少儲けたお金で経営者はリラックスして遊びにも行けるかも知れないし,地元の会合ではちょっとした名士にもなれるのかも知れない.

でも高い目標を掲げるとそうはいかない.従業員も10人から30人,50人,そして100人200人,1000人と増えていくと,組織運営も大変だ.売上も数億円から数百億円,数千億円にしたいのであれば,勿論家族経営の時とは全然異なったものになる.

当社も(そして自分自身も),この10年間で業態を変え,売上を2倍以上に伸ばし,社員も育ってきたと思う.でも額にすればとっても「たかが知れてる」状況なのだ.業界内では井の中の蛙状態で,いろんな人に褒められたり妬まれたりもしているようだが,世の中的に考えたら,ほんとに「井の中」状態である.ちょっと情けない.

これもそれもすべては,「目標設定が低すぎる」からである.登る山が業界内の小山であればこれでも良いかもしれない.そして多分他人に喜ばれる経営が出来ると思う.でも本当に持てる力を,より多くの世の中の人のために使うのなら,今のままでは余りに「井の中」 にこもり過ぎていると思う.

で,新しい目標を真剣に検討してみた.やはり漠然と思っていたが,具体的に日時を決めて上場するしかないと思う.勿論今のビジネスモデルでは全然駄目だから,一から操業するつもりで(隣接)事業を立ちあげていかねばならない.短期的な目標はもういい.具体的に何年か後に成長企業として注目されて上場準備に入れる様に,新しいビジネスモデルに取り組んでいきたいと思う. 

アメリカのNPO

カテゴリー: 経営日記

最近イベントが多過ぎて書くことも多過ぎて,なかなかまとまってブログを更新する時間がない.で,もう先月の話になってしまった渋澤渡米団の中から,特に印象に残った訪問について書いてみよう.

ワシントンDCで訪問したのは,環境関連NPOであるEnvironmental Defense Fund(EDF)である.その名の通り,「環境を守る財団」なのだが,通常のNPO,NGOと呼ばれる団体とは大分と運営方針が変わっている.

この財団は科学者や技術者,その他プロフェッショナルの集まりで,年間予算はなんと100億円.スタッフを数百人抱え,最先端の環境関連の情報や知見を有している.

特徴的なのは,地球環境,特に温暖化の問題を解決するために,民間企業と協力的な関係を築いている点だ.多くの環境NGOが,民間企業を敵に回して,時には反文明主義とも取れるような「貧しかった昔に戻ろう」的な過激な主張をすることもある.グリーンピースなんかは典型的だが,自然保護や環境保護のためには違法行為や逮捕者が出ることも辞さない過激な団体もある.

その点このEDFは,企業活動に対して省エネルギーを実現するための手法を,その企業と一緒になって考えるアプローチを取っている.例えば世界最大の小売業者であるウォルマートは,EDFの助言に従って輸送の際にかかるガソリンを節約することが出来た.そのことは勿論CO2削減につながるし,ウォルマートにとっても経費が削減できることになる.他にも大手化学会社であるデュポンをパートナーにしたり,マクドナルド,フェデックスなどもパートナーにしている.そうそう,世界最大級の投資会社であるKKRまでもパートナーとしているのだ.

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EDFが面白いのは,こうした企業に対する助言,コンサルティング業務に対してフィーを取っていないことだ.つまり無償で,一流の科学者たちが経費削減アドバイスをしているのと同じことになる.

なんでも市場のダイナミズムを生かして解決しようとするのがアメリカらしい.やみくもに政治的に主張するのではなく,民間企業との折り合いを「無償コンサルティングによる経費削減提案」という形で,結果的には環境保護に結び付けようとするところが面白い.

他にも潤沢な資金を使っての法案提案,新しい環境技術開発に対する援助なんかも行っている.資金は個人から,他の財団,そして企業寄付からなっている.それで年間100億円も集まるのだからアメリカは凄いと思う.

このNPOがやっているのも,「大きな社会的テーマを設定し,その解決に向けて創造的なアプローチを取る」例である.今回アメリカで学んだことを,NPOの分野で実現しているこの団体に訪問で来て良かった.また機会があれば,再訪したいと思います.

 

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