脳に騙される (2)
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ある雑誌を読んでいたら、「勝負脳」のことが書いてあった。一般に日本人選手はゴール際に弱いらしい。水泳の北島選手もある大会でゴール直前10メートルまでは世界記録を上回るペースだったのに、ゴールしてみるとわずか0.4秒差で記録を逃したことがあった。
人間の脳は自己防御本能がインプットされていて、ゴールが近いと意識されると自然と力を抜いて「次」の目標や敵のために力をセーブさせてしまう。要するに「力を使い切らない」様な本能が働いているのだ。そのために北島と言えどゴール前で失速してしまった。
マラソンでも不思議なもので、3キロ走ろうと思えば必ず2.5キロでしんどくなる。5キロなら4.5キロ、8キロと決めれば7キロを過ぎた辺りでもう辞めたくなる。ハーフマラソンだと18キロくらいか。これがフルマラソンだと10キロ通過は全く何も感じず鼻歌状態、ハーフでも余裕でスピードアップしたくなる位だ。タイムもハーフマラソンの時と殆ど変わらない。不思議なものだ。そしてこれが35キロでピタっと足が止まる。ゴールが近くなってくるとしんどさが増してくるのだ。これらの現象も、「脳に騙されている」のだ。
北村選手のコーチはこのことを学んで次のような作戦を立てた。ゴールしてから振り返り電光掲示板を見るところまでを本当のゴールと意識するように仕向けたのだ。その結果次の大会では見事に北島は世界記録を出すことができたらしい。
会社の経営も似たところがあって、これ位できたら凄いなという数字が近づいてくると何故か壁にぶつかる。例えば売上10億円を目前としていくらやっても出来なかったのが、一旦それを超えてしまうと売上10億円なんて全然余裕でできてしまったりする。これが20億円、30億円、100億円となってもやはり同じようなことなのだろう。物事に壁はない、壁は自分の脳が作っているのだ、ってことだ。
当社も勝手に自分で壁を作らないようにしようと思う。そのために有効なのは、北島のように少し先にゴールを意識するってことだ。ある実績を上げようと思うなら、その1.2倍位の目標を掲げて一生懸命それを達成しようとする。マラソンなら42キロ走る代わりに50キロくらいを目標にする。そうすれば本来の目標を意識せずに軽く達成できるんじゃないかと思う。
なので当社の今年の目標を後20%くらい上積みしようかなあ。既に営業計画は策定済みだけど、勝手に数字を積みあげたら怒られるだろうなあ。